「蹴猫的日常」編
文・五十畑 裕詞

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May 31, 2002
「今日の事件簿」


●徹夜明けで眠い事件
●ベルトでかぶれ事件
●銀行で非効率事件
●漫画のような女三人組事件
●有無を言わさず「ドレッシングはゴマ風味」事件
●井上ひさしのウンコとオナラ事件
●おっとなかなかいいじゃない事件
●蕁麻疹事件
●時間切れ事件
●オークションでワイズ事件
●回覧板事件
●焼き肉屋まあ繁盛事件
●並ハラミと骨付きカルビ事件
●花子がウンコまき散らし事件


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May 30, 2002
「過酷/幸運」


 精神的に過酷。トラブルの連続だった。
 肉体的に過酷。徹夜だった。
 でも、二十時ごろから山の手線に閉じこめられた人たちと比べたら、全然過酷じゃないよなあ。
 代々木駅の隣にあるビルが、二十時ごろ出火。電車はストップ、道路はとんでもない渋滞で大騒ぎになっていたようだ。たまたまだったのだが、その四、五十分前までぼくは代々木にいた。O社で打ち合わせをしていたのだ。もう少し長引いていたら、かならず巻き添えを食っていたはずだ。
 そういえば。オウムの地下鉄サリン事件。あの日、サリンガスはJR恵比寿駅でも発見されたのだが、ぼくはサリン騒ぎが起こる一時間前まで恵比寿にあるプロダクションで打ち合わせをしていた。
 幸運なのかな。

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May 29, 2002
「効果覿面/訛りの癒し」


 八時起床。腰はかなり楽になってきたが、まだ万全とは言えない。というわけで、午前中は「木村均整院」で治療。違和感がとれてきた。痛みも少なくなった。以前通っていた接骨院と比べると、効果覿面だ。
 月末はどうしても事務処理に時間を費やすことが多くなる。今日も午後はせっせと帳簿付けや見積、請求書の処理の没頭する。
 十七時、J社のIさん来社。なんと、香川日帰り出張から帰ってきたばかりだという。タフだなあ。E社の新端末のDMに関する打ち合わせ。決して十分とは言えない日程を知らされ、不安になる。
 二十二時三十分、大戸屋で夕食を済ませてから帰宅。なんだかつかれたなあ。でも、テレビ朝日で二十三時ごろから放映されている藤井隆の番組にゲストで出ていたモーニング娘。の高橋愛ちゃんをみたら元気回復。この子、おもしろいなあ。新人のなかではピカイチですね。若さと訛りの癒し効果。訛り=郷土の誇るべきことばを大切にしてもらいたいと強く思う。




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May 28, 2002
「夜明け前/光り輝く時」

 夜明け前の午前四時。花子にご飯をせがまれ起床する。薄暗いうちから大騒ぎしやがって、まったく。缶詰めを開けたらすぐに二度寝。ふう。
 八時、二度目の起床。花子はぼくをたたき起こしたことなどすっかり忘れたような顔で、呑気に日向ぼっこをしている。やれやれ。
 日中は事務処理と原稿の推敲など。二十時過ぎに帰宅。昨日、今日と早帰りが続く。いいペースだな、と思う。
 「重力の虹」。<光り輝く時>救出隊を率いるスロースロップ。波乱の予感。ところで、<光り輝く時>ってなんだ?


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May 27, 2002
「モロヘイヤで気合い/空豆/難民描写」


 八時起床。昨日就寝間際にグビッとビールを一缶空けたのがいけなかったのか、ちょっと身体がだるい。「野菜倶楽部」のモロヘイヤジュースで気合いを入れてから事務所へ。
 比較的平穏な一日。電話もほとんどならなかったので、原稿に集中できた。昼食は「それいゆ」でチーズカレー。カレーをドリアのようにしただけのものだが、意外に美味。食後は水出し珈琲をすすりながら「ニホン語日記」。読了してしまった。続いて二巻を読もうと思う。
 二十時三十分、帰宅。家に着くと、カミサンの実家からダンボール一杯の玉葱と空豆が届いていた。空豆は早速茹でて食す。この季節の味ですねえ、と舌鼓。ああ、今日は平和だなあ。その分、明日が怖くなる。
 「重力の虹」。<ツチ豚の穴>に囚われ、七時間に渡って難民生活とA4ロケットについてをしゃべり続けるグレタの夫・タナツのエピソード。第二次大戦後の難民に関する描写は、断片的ではあるものの、感情を排除している分だけ現実味がある。悲惨さを感じる、というのではない。脳みそを空っぽにされた状態で極限的な状況に突然放り込まれたような感覚を読み手に与える文章。こういうリアリティももあるんだなあ。
 例の北朝鮮の家族。大使館へ入り込もうとする映像だけでは、難民の真実は伝わらないと思った。
 「日本文学盛衰史」。口語詩の確立という問題に翻弄される若き詩人たち。舞台は明治と平成とが不安定に切り替わる。明治の文人たちが体験した文体の改革と同じ状況が、現代にもやってきているのかもしれない。井上ひさしの「ニホン語日記」を同時に読んでいたからだろうか、そんな気がしてならない。


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May 26, 2002
「なっち/ナッツ」


 十時二十分起床。今日もお寝坊だ。うれしい。
 テレビ東京の「ハローモーニング」を見ながら食事。青山の「こどもの城」で行われたミュージカルのメイキング映像が紹介されていた。新人四人のなかでは、高橋愛がいちばんこなれてきたような気がした。ちなみに、このミュージカルでなっちは団子屋を演じているらしい。似合うなあ。
 カミサンがお友だちと遊ぶといって外出。ひとりになったので、ドウブツたちを横に従えて午後からは読書に専念。井上ひさし「ニホン語日記」。「見てから定義しないで、定義してから見る」ことを日本人の特長だと分析する井上氏の観察力・考察力に感服してしまう。
 十五時よりひとりで外出。西友で「BEER」という名前の発泡酒を八缶、葱、上州赤鶏のもも肉、赤ピーマン、生姜、カシューナッツなど購入。突然雨が降りだしたので、無印良品で傘を買い、早速使うことに。てくてくと歩いて帰宅。スニーカーの先端がメッシュになっていたので、靴下がグシャグシャになった。まあ、傘がなくて頭からびちょ濡れになるよりマシだ。
 カミサンは友だちと高円寺の沖縄料理店「きよ香」で夕ご飯を食べるというので、自分で作ってひとりで食べることに。メニューは西友のお買い物でもわかると思うが、鶏肉のカシューナッツ炒めだ。なぜかというと、朝、「ハローモーニング」でなっちを見たから。なっち、ナッチ、ナッツ…。自分でも呆れる。
 入浴中に「ニホン語日記」。ちょっとお酒が入っていたので、小難しい「重力の虹」は今日はお休みだ。


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May 25, 2002
「ブランチを見ながら/ねこだすけ/歳をとったんだなあ」


 十時三十分起床。久しぶりのお寝坊だ。「王様のブランチ」を見ながらブランチを食べ、十三時に事務所へ。今日の目的は仕事ではなく、ボランティアだ。微力ながらもお手伝いさせていただいている動物愛護NPOの「ねこだすけ」さんのために、動物遺棄防止のための看板のデザインを作る。コピーライター兼プランナーのぼくはデザインは素人なのだが、それでもねこだすけさんはぼくと梶原の作ったデザイン案がお気に入りのようだ。人の役に立つことはどうでもいいのだが、これで自分の意志とはかかわりなく不遇な環境に身を置かなければならない動物たちが少しでも救われるかと思うと、感無量である。
 十五時、「プラス・ド・ルポ」へ。リフレクソロジーサロンだ。事務所が近所にあることもあり、ここのおばさんとは顔なじみなのでサービスしてくれたのだろうか、六十分のところ、ちょっと長めに治療してくれた。
 夕方は花子を連れて「小張動物病院」へ。予防注射を打ってもらう。花子を病院に連れていくときには、血を見る覚悟が必要だ。なにかされる、と気付くと花子は怒って逆上し、その結果かならず負傷者が出るのだ。ところが、今回はなぜかおとなしかった。と思ったら、治療台の上におしっこをちびっていた。暴れっぷりがパワーダウンしている。こいつも歳をとったんだなあ、とおしっこをトイレットペーパーで拭く先生の手を見ながら思った。
 夜は牛スネ肉を使ってビーフカレーを作る。ちょっと赤ワインを入れすぎた。が、まあ及第点。こんなもんかな。
 残ったワインを調子に乗ってグビグビと飲んでいたら、一気に酔いが回ってしまった。さっさと寝ることにする(だから、この日記もその日の夜はサボリ。翌日に書いているのだ。ははは)。



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May 24 2002
「今日は短め」


 八時起床。疲れは取れたような気がする。しかし、トイレで出したもの(大)を見てびっくり。真っ黒だったのだ。そんなもの、食べてないのに。うーむ。こわい。
 坐骨神経痛はだいぶ快方に向かっている。こっちは安心だ。
 「ニホン語日記」。ためになるなあ。
 「重力の虹」。わけのわからん本を分けのわからんままに読む。そんな感じが何日か続いている。このまま読み続けていいのかなあ。


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May 23, 2002
「身体がいうこととを聞かなくなってきたよ」


 仕事は小康状態。気が緩んでいるのだろうか、朝から眩暈と頭痛に悩まされる。「野菜倶楽部」のモロヘイヤジュース(ストレート)を飲んでみたら、少し落ち着いた。
 十六時より新富町のJ社にて、Nの打ち合わせ。反省すべき点が多く、少々落ち込む。もちろんそんな様子を相手に見せたりはしなかったが。十七時四十五分、三田へ移動。次の打ち合わせまで若干時間に余裕があるので、某コーヒーショップで話すべきことのまとめなどをしつつ時間を潰すことに。アイスコーヒーとホットドッグ。後者はかなりいい加減な食材を使っているようだ。パンはパサパサ、ソーセージは添加物がてんこ盛りのようだ。気分が悪くなるが、そこをググッと堪えながらT社へ。小一時間ほど打ち合わせをしてから帰社。ホットドッグが内臓に強烈なダメージを与えてくれたようだ。電車のなかで倒れそうになるが、気合いでごまかす。事務所には寄らずにそのまま帰宅した。
 今週末こそはしっかり休まないと、ほんとに身体がおかしくなりそうだなあ。
 「ニホン語日記」。新宿の電話ボックスビラのコピー分析は圧巻。

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May 22, 2002
「坐骨神経痛/絶妙のタイミング/ミヤケの似合う美女/もしも啄木が」


 昨日電話で予約した「木村均整院」なる整体へ行く。腰の痛みは最高潮に達している。自転車にまたがるだけでも一苦労だ。問診の後、およそ一時間の治療。ぼくの反応を見ながら、先生は丁寧に身体のあちこちを確認し、調整していく。診断の結果、どうやら腰と尻の筋肉の痛みは坐骨神経痛らしいことが判明した。坐骨神経痛は椎間板ヘルニアからくることが多いらしい。ひょっとしたらぼくもヘルニアの気があるのかも。気をつけねば。坐骨のほうは気長に治すしかないな。肩凝りも尋常じゃない、とのこと。こっちも気をつけないと。
 十一時半頃、じつはカミサンの大学時代の先輩である猫ヶ島のしまちゃんが事務所に遊びに来る。しまちゃん、今日はベトナムファッションだ。全然違和感がないんだよなあ。カミサンと三人で「ムーラン」にて昼食。ぼくはマレー風カレーにした。先日、けいぞうが食べていたのと同じものだ。うまい。ちなみに、カレーを喰うのは今週は二度目だ。
 十五時過ぎ、しまちゃんがミーファさんという美人ミュージシャンを連れて再登場。全身イッセイ・ミヤケ。モデルをしていたこともある美女なので、まあ似合うこと似合うこと。びっくりだ。「西荻牧場ぼぼり」のアイスクリームを食べ、舌鼓を打ちつつしばし雑談(お仕事絡みも含む)。それにしても、今日のしまちゃんはアイデアが煮詰まり脳が腐りかけたときに絶妙のタイミングで現れてくれた。いいリフレッシュになる。ありがたや、ありがたや。
 夕方から夜にかけては電話もならず来客もなかったので、落ち着いて作業できた。でも煮詰まる。どうしようか。
 「重力の虹」。雷に打たれたがっている葬儀屋のエピソード。
 「日本文学盛衰史」。伝言ダイヤルに夢中になり、アダルトビデオで気を紛らわせる石川啄木。高橋源一郎がなにを書きたいのかが、なんとなく見えてきた。これは遊びではない。もし啄木が現代に生きていたら…。

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May 21, 2002
「夢見が悪い/女装趣味はないよ/なんでも読むんだ/いたって普通な記念日」


 最近、どうも目覚めが悪い。体調が今ひとつであることも原因だけれども、もっと大きいのは夢の内容だ。とんでもないストレスや欲求不満を抱え込んでしまっているのだろうか。不思議な夢ばかり見る。目覚めると、ついついその夢の意味について考えてしまうのだ。フロイトにかぶれているわけではないのだが、そうしたくなるほど不可解な夢を見ることが多い。そういえば、最近リフレッシュしてないや。これが原因だな。なっちが出る夢をまた見たいと思う。これ本気。
 午後より築地のO社にて打ち合わせ。ある女性向け商品を扱う企業のウェブサイトのプロモーション企画の依頼だ。女性になったつもりで考えてみる。こういう作業は結構好きだ。女装趣味はないけれど。
 事務所に帰る前に、新宿のHMVでデヴィッドの新作「Camphor」を予約する。「ボーナスCD付きのほうでよろしいですよね」と切り返され、びっくりする。ちゃんと把握しているんだなあ。同じフロアの書店で井上ひさし「ニホン語日記」「ニホン語日記2」を購入。井上ひさしは最近いちばん気になっている作家だ。なぜだろう。よくわからない。ぼくは漱石も鴎外も読む。大宰もミシマも読む。安吾も読む。ゲーテもカフカも読む。カルヴィーノも読む。ピンチョンも読む。オースターも読む。中上健次も大江健三郎も読む。「気の生命活性術」とか「肩凝り・腰痛がみるみる直る」なんて本も読む。「広告コピー概論」も「マーケティングの基礎知識」も読む。なんでも読むのだ。
 電車のなかで「ブンとフン」完読。昭和という時代を理解するための必読本だと思った
 おっと。今日は結婚記念日。八年目を迎えることになる。よくもった、というべきか、まだまだこんなの序の口というべきか。…後者ということにしておこう。仕事を早々に切り上げ、カミサンとふたりで西荻窪では二番目に美味しいイタリアン「トラットリア ビア ヌォーバ」でお祝いをする。といっても、ワインとコース料理を愉しむだけなのだが。料理はまあ、こんなもんかなという程度。アンチョビのパスタは美味だったが、あまり印象に残らない。会話もほとんどいつもと変わらなかった。我が家の場合、カミサンはビジネスパートナーでもあるので四六時中顔を合わせっぱなしだから、特別な話をする必要はそうそうないのだ。
 腰と股関節の痛みが全然引かない。明日から治療先を変えてみようと思う。



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May 20, 2002
「不調な一日/縦書き」


 最近ずっと腰の調子が悪い。接骨院の先生に股関節と骨盤のゆがみも指摘され、下半身がズタズタだったことに気付かされた。治療のために毎日通い続けているが、回復があまりに遅々としていて苛立ってしまう。今日は雨。この腰痛、おそらくは天候不順が引き起こしたに違いない。すべてを天気のせいにする。今朝も雨だ。
 日中はN社の原稿に没頭する。資料の読み込みと構成にたっぷりと時間をかけた成果なのだろうか、かなりの速度で書き上げることができた。が、読み返してみると書ききれていない部分があったりする。誌面の都合があるのでやむを得ないことなのだが、それでもやはり釈然としないものがある。目を閉じて深呼吸。ベランダに出て上半身のストレッチ。よくいえば気分転換だが、悪くいえば自分の不甲斐なさをごまかしているだけだ。あまりくどくど考えていても仕方ないので、気にせず仕事を進めることにした。
 ヤフーショッピングで注文しておいた書籍二冊が届く。実際に手に取ることなく本を買うのははじめてだ。パラパラとめくってみる。想像通りの内容みたいだ。ちょっと肩透かしを食らったような気分になる。なんか今日は不調だなあ。身体も心も。
 体調も気分も優れなかったが、仕事のほうは極めて順調、というより平穏。二十時に帰宅する。いらいらが伝わっているのだろうか、猫があまり寄ってこない。
 気分転換にもってこいなのは、やはり身体を喜ばせることだと思う。風呂に入たら、なんだかもみょうにさっぱりした。パンツだけ履いて上半身は裸のまま、肩からタオルを賭けた状態でインコたちのかごを覗き込んでみると、うりゃうりゃのヤツがぼくの頭をじっと見つめていた。「濡れてるよ。どうしたの」といっているみたいだ。話しかけたら、期限よさそうに返事してくれた。「キョーッ」
 「重力の虹」。二重スパイのモチベーション。マゾヒズムの心理的理由。
 「ブンとフン」。ナンセンス文学はブラックユーモアで成り立つんだよなあ。
 今日から日記を縦書きで書くことにした(サイトアップは横書きだけど)。マッキントッシュ用のワープロソフト「EGWORD」で縦書きレイアウトを表示させている。このソフトはマルチアンドゥができないので、文章が一発勝負になる。ちょっと緊張するんだよなあ。それから縦書きのちから。横書きのときより、一字一句にこだわってみたくなってしまう。出来上がってみると、大きな変化はないみたいだけれど。



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May 19, 2002
「気付かぬ腕まくら/ちょっと馬鹿馬鹿しい/バージョン1/今一つの謎」


 夕べは麦次郎と腕まくらで寝ていたらしい。気付かなかった。寝る前にたっぷり遊んであげたせいだろうか。
 今日も休日出勤。黙々と作業を続けるが、昼食をとりに外へ出たときに駅前でお祭りをしているの見てしまうと、働くことが馬鹿馬鹿しくなってしまう。それでもなんとかN社の新規原稿、大枠だけは作り上げた。あとはその骨格にそって原稿を書くだけ。まあ、これが大変なのだが。
 夕方は「なまけ猫ショールーム バージョン1」のセッティング作業。打ち合わせ室にパーテーションを置いてそこにカミサンの絵を飾っただけなのだが、それだけでもずいぶん小洒落た感じがしてくるから不思議だ。たくさんの人に来て欲しいと思う。
 「サイボーグ009」。原作では面白かった話がアニメだと今一つになってしまうのはどういうわけか。謎だ。
 空から花びらが降る。そのなかで舞踏の老雄が舞いを見せる。舞踏家の大野一雄氏(95)が、生け花作家の中川幸夫氏(83)とヘリコプターによるチューリップの花吹雪のなかでパフォーマンスするという、粋なコラボレーションを行ったそうだ。見に行きたかったなあ。ぼくは子どものころから「空から花びらが降ってくる」というイメージをずっとこころに抱き続けてきた。正確にいうと「空間から」ということになるかもしれないが…。どこからともなく現れる花びらの嵐のにたち尽くしてみたい、と漠然とながら思い続けてきた。小学生のときに見た、石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)の漫画に登場した桜吹雪の絵が忘れられないのだ。石ノ森漫画がぼくに与えてくれたものは数えきれない。テレビ版の「009」がぼくにとって今一つに感じられてしまうのは、ひょっとしたらアニメーターがこういう思いを抱いていないからなのかもしれない。
 「重力の虹」。スロースロップ争奪戦がはじまろうとしているみたいだ。

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May 18, 2002
「マンネリ・ライフ/蒸し蒸しチキンそり旅行/西荻を歩く/『コラボレーション』という人称/たんぽぽ」


 八時五十分起床。土曜日恒例、「建もの探訪」を見ながら朝食。総檜の低コスト住宅。この番組を見るようになってからずいぶん経つが、はじめてまったく魅力を感じなかった。麻痺しちゃったのだろうか。
 十時、いつもの接骨院へ。まだちょっと痛むのだが、だいぶ良くなってきた感じ。
 治療後、事務所へ。今週もまた休日出勤だ。これまた恒例。きょうは「恒例」とか「いつもの」が多いな。生活がマンネリ化しているのかもしれない。
 十三時、陶芸家のタマゴ・けいぞう(♀)が事務所に遊びに来る。けいぞう、カミサンと三人で、近所の「海南チキンライス ムーハン」で昼食をとる。マレーシア風チキンライスが売りの、いかにも最近の西荻的なアジアンごはんカフェだ。味は絶品。三種類のタレで食べる蒸し蒸しチキンとチキンスープで炊いたご飯を使った炒飯の組み合わせの妙。日本を感じさせない味なのだが、だからといって他の国の味というわけでもない。だからやっぱり日本の味、新しい日本の味なのかな、なんて思いながらバクバク食べた。美味い。イタチョコの「蒸し蒸しチキンそり旅行」というゲームを思い出した。プレイしたことはない。
 デザートは場所を変えて「西荻牧場ぼぼり」で伝説のアイス「いちごみるく」を食べる。ああ、これも美味。けいぞうも大絶賛だ。 食後は腹ごなしをかねて西荻を散策。八年も住んでいるというのに、じつは昼間にじっくり街の中を歩き回ったことはほとんどない。もっぱら夜ばかりだったので、詳しいのは飲み屋だけだったのだ。明るい日差しのもとで見る西荻の街は、夜とは一味違った独特の雰囲気を持っている。トレンドとは無縁、珍妙なサブカルチャーとアングラが、中央線独特の下町文化の中に入り乱れるようにして息づいている。
 夕方、事務所でけいぞうとカミサンがコラボレーションの打ち合わせ。絵が描ける、焼き物を焼けるという技能をうらやましく思う。言葉はコラボレーションしにくいもんなあ。文学は一人称と二人称を交じり合わせるというのが苦手なのだと思う。芸術家のコラボレーションは、I と You が交じり合って、We とはちょっと違った新しい人称を作り出す。
 けいぞう帰宅後、少しだけ仕事をしてから事務所を閉める。荻窪で買い物をしてから帰宅。
 テレビで伊丹十三監督の「たんぽぽ」を見る。たぶん四回目。でも四年に一回くらいしか見ないので、細部は忘れてしまっている。そこを気付かされるのがまた新鮮でいい感じ。
 映画を見ている間、ずっと麦次郎をあぐらをかいた足の上に乗せて(我が家ではこれを「さんかく」と呼ぶ)、ひたすらにいじくり回していた。もみくちゃにされるのが、めちゃくちゃうれしいらしい。しあわせなやつだ。
 今日は久々に仕事以外では活字レスの日にしようと思う。だから読書に関することはナシ。たまにはこういうこともある。


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May 17, 2002
「もくもく/紙がしっくり/てきとーな盛りつけ/はよ寝れ」


 今日も天気は悪そうだ。先日お気に入りの傘をなくしてしまったので、雨が降りそうになると嫌な気分になる。
 今日は外出もせず、ただひたすらに黙々と企画に精を出す。イベントのアイデアを求められているのだが、じつはもっとも苦手な分野。形になるもののほうが好きだ。紙の媒体がいちばんしっくりする。
 二十一時、業務終了。「桂花飯店」で炒飯、五目かた焼きそば。焼きそば、なんだか今日は盛りつけがてきとーな感じだ。どこが違うのだろうか。
 二十二時、帰宅。風呂から出ると、おういうわけかインコのうりゃうりゃがすぐにぼくのほうへ寄ってくる。「かまってくれ。なんかしゃべれ」と言っているようだ。うーん、もう遅いんだから、はよ寝なさいな。


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May 16, 2002
「歩くこととは/てんやわんや/F●MA/無駄がない/待たされた/どこからどこまで?」


 七時五十分起床。腰の痛みに堪えながら、歩いて事務所へ。まあ、我慢できないほどの痛みではないので大丈夫だ。ゆっくり歩く。いつもは気にも留めなかったものがやたらと目に留まる。歩くということは、多くの情報を得るということでもある。
 午前中はトラブルの対応にてんやわんやの大騒ぎ。ようやく落ち着いたのが十三時。遅めの昼食を済ませてから外出。
 某携帯電話会社の企画のために、某ショップにて客を装う極秘取材を敢行。気合いを入れるために、30,000円もする最新型の端末を購入。いわゆる機種変更だ。なにやらいろいろとノベルティをもらってしまったが、役に立ちそうなのはウェットティッシュだけだった。カタログやらパンフレットやらをしこたまかばんに押し込んでから帰社。
 夕方からは、取材内容のまとめ作業。つづいて要点を抽出し、アイデアラッシュをメモに書き出していく。ひとりブレインストーミングだ。なかなかいい感じ。思考に無駄がない。午前零時、帰宅。
 「週刊モーニング」。「暁星記」第二部がはじまった。三年近く待たされたのではないだろうか。
 「日本文学盛衰史」。どこまでが史実に乗っ取っていて、どこからが虚構なのかがわからない。
 布団に入ろうとしたら、花子にベッドを占拠されていた。仕方ないので花子をよけるようにして寝る。


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May 15, 2002
「お尻や股の付け根/クラクラ/カッチョイイ宇津井健」

 腰の具合、昨日よりはだいぶいい。痛みが腰からお尻や股の付け根のあたりにずれてきた感じがするのがちょっと気になるが。
 接骨院によってから出社。N社の原稿に没頭する。外資系の企業なのだが、いただいた資料はほとんどが読むと頭がくらくらしてきそうな直訳文。日本語を読みとるのに、こんなに時間をかけるのははじめてだ。パラグラフを区切り、センテンスを細切れにし、一字一句ずつ意味を租借しながらノートにメモを取る。英和辞書と国語辞書を交互に引いて、謎のことばの意味を探る。ああ、まるで受験生。
 二十一時五十分、資料を読み終えた段階で頭が飽和状態になったためこれ以上の作業は無駄と判断し帰宅。帰るやいなや、いきなり猫のゲロを踏んづけてしまった。踏んだり蹴ったりだ。
 日本テレビ「ごくせん」を見ながら夕食。宇津井健を生まれてはじめてカッチョいいと思った。
 「重力の虹」。ブリセロの寵愛を受け、そしてスロースロップに愛された二重スパイの女・カティエがふたたび登場。エンツィアーンと接触する。電球のサイドストーリーで大きく脱線していたが、また物語は大きく動き出したようだ。


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May 14, 2002
「生命の神秘、身体の神秘/エンターテイメントだなあ/ピンチョンの想像力」


 七時五十分起床。日課の体操を、と思ったが腰痛が昨日以上に悪化しているため断念。右側だけがひどく痛む。びっこをひくほどの痛さだ。痛いのは腰なのに、なぜ足に影響が出るのだろう。つながっているからだろうか。よくわからんが、歩けん。困った
 まずは切らしていた風邪薬を調達するために事務所の隣にある診療所へ。先日の一時間待ちが嘘みたいにがらがら。五分で診療所を出た。薬局で調剤してもらっている時間のほうが長いくらいだった。続いて形成外科のある病院へ行くが、先生が体調不良で倒れたため今日は休診とのこと。なんだそりゃ。ひどいなあ。困っていたところ、以前寝違えたときにお世話になった接骨院を思い出し、そこに駆け込むことに(といっても、びっこを引きながらゆっくり歩いていったのだが)。ここは「活法蘇生術」とかいう東洋医学の系列の方法を用いて治療する、ちょいと一風変わった接骨院。寝違えたときは、なぜか膝の裏をグリグリっとされた(これ、ずっと前に日記に書いたような気がするなあ)。するとあら不思議、首が回るようになっているのである。もちろん、だからといって油断禁物。何回かは通って完全に治療する必要がある。さて、今回は…やっぱり寝違え同様、膝の裏側、それから腕の付け根をグリングリンといじられた。激痛が走るが、治療後はなぜか腰の痛みがやわらいだ。びっこを引かずに歩けるようになってしまったのだ。生命の神秘、身体の神秘。
 以上で病院巡りは終了。出社後はもくもくと原稿執筆に励む。
 「ブンとフン」。エンターテイメントだなあ。
 「重力の虹」。電球のような身近な存在の無機物、道具に人格をもたせて想像を膨らませる…ということは、ぼくはやったことがない。ピンチョンはこういうのが得意なんだろうな。
 高橋源一郎「日本文学盛衰史」を読みはじめる。二葉亭四迷の死にまつわるエピソードを格調高い文体でつづっている。


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May 13, 2002
「なんだこりゃ?/だめかな/なのだろうか/なったのだ/することに/もうやだ/だった」


 体調が悪い。風邪が悪化したのだろうか、脳がしびれるような頭痛と腰痛。食欲減退。なんだこりゃ?
 午後より恵比寿ガーデンプレイスでJ社の取材。仕事モードになると体調の悪さなどどこかへ吹っ飛んでしまうのだが、一段落すると緊張の糸がほぐれるためか、またぶり返してくる。やれやれ。ちゃんと休みをとらないとだめかな。
 体調が悪くても読書はする。中上健次「岬」完読。血縁に振り回される感情は最高潮に達し、何の解決策も見いだせないまま物語は終わる。このあとに続く物語が「火宅」なのだろうか。
 恵比寿駅ビルの書店で井上ひさし「ブンとフン」を購入。さっそく電車のなかで読む。しばらく重たい読書が続いていたので、軽ーい作品が読みたくなったのだ。
 帰宅後、取材内容をまとめ原稿執筆の準備を進めるが、頭痛のため遅々として進まず。断念し、帰宅することに。
 帰宅後、あまりに体がだるいのでマッサージ機を引っぱり出し体をゆだねてみたのだが、これが裏目に。背中一面にじんましんができてしまった。あー、もうやだ。
 就寝前に高橋源一郎「ゴヂラ」完読。あまり印象に残らない作品だった。

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May 12, 2002
「毛感/母の日、花の日/白生(購入編)/伏線/白生(感想編)」


 八時三十分、目が覚める。布団のなかから花子を呼ぶと、一秒後には目の前に現れた。五分ほど花子と戯れてから起床する。顔に花子の毛がついた感じがした。かゆい。いつもより時間をかけて洗ってしまった。かゆみと洗顔はあまり関係ないはずなんだけど、ついつい。
 九時三十分、事務所へ。O社の企画を練り始めるが、大きな問題点に直面してしまう。クライアントへの確認が必要になってしまったが、日曜ゆえそれができない。というわけでお仕事終了。
 夕方、吉祥寺へお買い物。混雑具合がいつもの土日の比ではない。おそらく「やっと雨が上がった・」+「母の日だから何か買ってあげなきゃ」がこの人混みを生み出しているに違いない。そういえば、西荻窪の花屋さんでは小学生限定で、母の日用カーネーションの花束を300円で売っていた。親をいたわるのはいいことだ。ぼくも実家には花を贈った。ただし、ぼくの場合はそれ以外まったく親孝行らしいことをしていない。それどころか…。
 カルディ・コーヒーファームにて「白生」とかいう名前のベルギー産にごりビールを購入。白濁しているらしい。どんな味がするのか、楽しみだ。
 十八時三十分、「サイボーグ009」。「神々との闘い」編の伏線、とも解釈できるエピソード。原作では、あんな話あったかなあ。
 「重力の虹」。白熱電球バイロンのエピソード。彼は、決して消えることのない不滅の電球だ。このアイデアだけでじゅうぶん一本の小説が書けそうだが、そうしないのがピンチョンのすごいところだ。
 白生。甘くて香りがきつすぎて、ぼくにはちとつらいビールだった。二度と買わないと思う。

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May 11, 2002
「Naze ka Roma ji de」


Kyou ha 1 nichi juu Oshigoto wo shite imashita.
Ashita mo Oshigoto desu.
Oshimai.

 ローマ字で書いてみた。妙なリズム感が面白いようではあるのだが、まるで情緒が感じられない。漢字仮名交じりという日本語のすばらしさを再認識しつつ、ひょっとしたらローマ字にはスゲエことができる可能性が秘められているのかも、なんて思ったりした。
 「重力の虹」。白熱電球の物語。ああ、もう、わけわからん。
 「ゴヂラ」。これは別れた前妻・高橋直子さんへのメッセージなのではないか、なんて勘ぐってしまう。


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May 10, 2002
「海の日にクラゲ/見切り/古今東西」


 新聞にあった気象図を見てびっくり。梅雨前線にそっくりの前線がある。気圧配置も似ているようだ。偽梅雨到来。季節の前倒し現象はまだまだ続くのだろうか。こりゃ、海の日にクラゲが出るかも。
 今日は一日腰を据えてO社の販促企画を、と思っていたのだが夕方には集中力の限界が到来。気分転換を兼ねて近所の鍼灸治療院へ。首から腰にかけて、つまり背中一面に鍼。仕上げのマッサージでリフレッシュ完了だ。事務所に戻り引き続き作業をするが、とても今日中には終わらなそうだ。二十一時、見切りをつけて帰宅。これで休日出勤が決定だ。あーあ。
 夕食後、テレビ東京の「芸術に恋して」を見ながら麦次郎で遊ぶ。今日は「古今東西猫でジェスチャーごっこ」というのを思いついた。「ここんとうざいー、ひこうきのかたちー。はい、じゃんぼじぇっときー。はい、せすなきー。はい、ぜろせんー」このあいだ、麦次郎はどんな状態になっているかはおよそ想像がつくと思うので、詳しくは書かないことにする。
 「岬」。家族の本質とは何なのだろうか。深い。
 「重力の虹」。意味不明のパラグラフが続く。わかんなくなっちゃったよお。
 「ゴヂラ」。これも「岬」と同じく私小説。かなり表現方法は異なるが。

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May 9, 2002
「なっち似の女子高生/占いとおんなじだ/リニアとノンリニア/数奇な血縁/いろんな常識」


 東武線の草加駅からふた駅くらい離れた街にぼくは住んでいる。竹の塚あたりだろうか。ぼくはまだ大学生で、なぜかモー娘。の安倍なつみ似の小柄な女子高生とつき合っている。彼女は通学でボロボロになったローファーを脱ぐと紺色のルーズソックスを履いた足をぼくに見せる。「最近、足がどんどん大きくなるのよねー。24.5でもきついんだよ」。おいおい、おまえの身長は150センチちょいくらいだろ。オレは170センチあるが、足のサイズは25.5だぞ。自分より足のデカイ女とつき合ってるのかよ、オレ。
 という場面で目が覚める。変な夢だった。
 どんよりした空模様。今年は桜だけでなく梅雨までフライングしているようだ。だが今日一日は雨は降らないらしい。天気予報を「当たるも八卦、当たらぬも八卦」、朝のニュース番組の占いと同じ程度に参考にしつつ事務所へ行く。傘はもたなかった。
 午前中は黙々と企画書の作成。マーケティング上のロジックとプロモーションの方向性をなんとか捻り出す。昨日の打ち合わせでだいたいの骨格は見えていたのだが、それは断片でしかなかったようだ。断片をノンリニアにまとめあげる。展開と収束。編集、置換。手を加え、理屈が揺れなくなってきたところで、それをリニアなかたちに書き出していく。これがぼくの企画作成スタイルだ。
 午後より新富町のJ社へ。Nの打ち合わせ。来週からかなり忙しくなりそうだな。今も十分忙しいけど。
 電車のなかで「岬」。「浄徳寺ツアー」は広義的な意味での「血」がテーマだったが、「岬」はもう少しはっきりとした「血縁」がテーマになっているようだ。ただし、ただの血縁ではない。「数奇な血縁」だ。
 朝日新聞夕刊で英文学者の柳瀬尚紀氏が「猫舌三昧」というエッセイを連載している。かの珍書「フィネガンズ・ウェイク」を翻訳しただけあって内容はなかなかユニーク。ときどきシニカルなスパイスを利かせた文体と視点、そして考え方が気に入っている。今日のタイトルは「常識」。「常識」だけで、アインシュタインからフィリップ・マーロウまで、幅広い引用から独自の常識論をばらばらと展開している。圧巻。
 柳瀬氏のエッセイの上には、詩人の高橋睦朗氏の詩論が掲載されていた。今日の新聞は読み応えあるなあ。

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May 8, 2002
「岬/美咲/なっち」


 一晩寝たら、だいぶ体調がよくなった。しかし、まだ完全ではない。鼻水が止まらないのだ。それから頭痛。丸一日しっかり休んで直してしまいたいのだが、そうも言っていられない。ふう。
 午後、代官山のI社で打ち合わせ。T氏から、「連休中にあった方が『なまけ猫王国』をよくご覧になっている方だった」という話を聞いて仰天。ぼくの日記も読んでいらっしゃるそうで、赤面してしまった。世の中、狭いもんだ。
 移動中の車内で中上健次「岬」。主人公の秋幸はおそらく中上氏がモデルなのだと思うが、秋幸=中上氏、というわけではない。これが私小説の基本なのだろうか。
 帰宅後、仲間由紀恵が出ているドラマ「ごくせん」をチラリ。出演者が濃すぎる。天丼みたいな味わいだなあ。伊東美咲ちゃんがかわいいと思った。
 入浴後、藤井隆が金髪のヅラをかぶって出ている番組のゲストに、モー娘。のなっち登場。藤井のくどい問いかけにノリノリで答えるなっち。冴えてるなあ。ちょっとうらやましくなった。藤井が、ではなく、なっちが、だ。そうそう。保田圭は白子にはまっているらしい。
 「重力の虹」。統計学者から麻薬中毒者まで。<ホワイト・ヴィジテーション>の問題児がいつの間にか結集している。どうなることやら。


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May 7, 2002
「持つべきものは、体力。先立つものは、体力。」


 起きることができない。体が動かない。花子が騒ぐので無理矢理起きたら、胃液をはいてしまった。咳、鼻水、頭痛。うわ、風邪みたいだ。というわけで、午前中は病院へ。連休明けのせいだろう、案の定待合室は大混雑。一時間待って、診察時間はほんの二、三分。いい加減にあしらわれたので腹が立った。処方箋をもらうだけのために一時間も待ったようなものだ。いきつけの薬局で薬を出してもらう。なんだよ、こっちのほうが丁寧に説明してくれるぞ。医者だってサービス業じゃないか。客とはきちんと接しろ。まったく。
 薬が効いたのか、午後は体が楽になってきた。が念のために十九時で帰宅。一度仮眠をとってから夕食を食べ、十二時前には就寝することに。持つべきものは、体力。先立つものは、体力。体調だけは常に気をつけておきたい。
 「重力の虹」。ろくでなしのスロースロップを救おうとするロジャー・メキシコのエピソード。だがコイツも手に負えないほどのろくでなしみたいだ。いや、この物語の登場人物は、基本的にほとんどがろくでなしだな。

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May 6, 2002
「一切なし」


 連休最終日もお仕事。連休らしいことは一切しなかったな。
 「重力の虹」。第4章のスタート。まだなんにもわかんないや。


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May 5, 2002
「模様替え=大掃除/出来の悪い剣道」


 連休後半戦の3日目は、ただひたすらに模様替え。模様替えは大掃除と同義語であることを、体験を通じて理解することができた。貴重。
 不調だった自宅のキャンディカラーiMac。思い切って書斎からリビングに場所を移したら急に元気になった。不思議だ。
 夜は友人からいただいた泡盛の古酒を飲みながら「スターウォーズ ジェダイの復讐」を見る。ああ、何度見てもハッピーエンド・ストーリーに苛ついてしまう。あの世界観は好きなのだけれど。ルークとダース・ベイダーの戦い、ありゃへたくそ同士の剣道だな。
 「重力の虹」。いよいよ第4章「反勢力」に突入。このとっちらかった物語がどのように収束されるのか。楽しみだ。

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May 4, 2002
「杉より桧/今日もお仕事/ゴルチェの手帳/大苦戦/支配階級の同性愛」


 九時起床。目が猛烈にかゆい。鼻の穴もだばだばになっている。ぼくの花粉症は杉より桧のほうが症状がきつい。とはいえ、マスクをするのは面倒だし煩わしい。薬を飲むと眠くなる。だからこの季節はサングラスとティッシュペーパーが欠かせない。
 「建もの探訪」を見てから事務所へ。連休後半戦の2日目も仕事だ。やれやれ。昨日手つかずになってしまった仕事や、依頼しておいたデザインのチェックなど。軌道修正してからクライアントに連絡しようと思う。
 以前うちの会社で働いていたMからメールをもらう。次の会社が決まったことまでは知っていたが、どうやらぼくなんかよりも大きな仕事をばりばりこなしているらしい。安心する。遊びに行ってもいいですか、なんて書いてある。社交辞令かもしれないが、スタジオ・キャットキックのことは快く思っていないだろうと考えていたので、こういう申し出はうれしい。返事を書こうと思うが、なかなか書き出せない(日記だとすらすらと書けてしまうのがちょっと不思議なのだが)。
 昨日から手帳を変えてみた。今まで愛用していたフランクリン・プランナーのポケット・サイズの大きさがどうもしっくりこないのだ。無駄があるような気がする。それにバインダーの痛みが異常なくらいに激しい。まだ半年しか使っていないというのに。インターネットで調べると、どうやらフランクリンのバインダーは評判があまり思わしくないらしい。こりゃ遅かれ早かれ買い換えなきゃならんときが来るな、と 
思っていた矢先に、某デパートでジャン・ポール・ゴルチェのミニ6穴バインダーが半額以下になっているのを見つけたのだ。羊の皮だと思うのだが、これに鳥の羽根をモチーフにしたテクスチャーがプレスされていて、その芸術的とも言えそうなイケてるデザインに一目惚れしてしまった。リフィルはもちろん自作だ。いわゆるミニ6穴サイズのリフィルは小さすぎて書きにくい。使いものにならないのだ。いろいろと試してみた結果、バインダーに収納できるぎりぎりのサイズは88mm×130mmと判明。リフィルはこのサイズのものをIllustratorで作成し、レーザープリンターで両面印刷して使うことにした。左右幅はフランクリンと1mmしか違わないので、記入スペースが極端に狭くなったような感覚はない。むしろ、小さくしたことによる利点を感じるのだ。天地が短くなった分だけ無駄がなくなり、手帳と今まで異常に集中して向き合える。集中できること。これこそ、手帳を選ぶ上で一番たいせつなポイント。
 十九時三十分、帰宅。先日House Stylingで注文したテレビ用のラックがもう到着していた。早速組み立てることに。パーツの多さと部材の重さに大苦戦を強いられるが、二十二時過ぎになんとかセッティング完了。明日は今まで使っていたラックを別の部屋に移す作業をする。大掃除になりそうだ。
 「重力の虹」。ようやく「ゾーンにて」の章を完読。ラストシーンで、著者は戦争を支配階級の同性愛に喩えて語っている。この文章に、この作品のテーマの大部分が隠れているような気がした。

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May 3, 2002
「今日は箇条書き」


●憲法のことを考えて。
●連休を、連休らしく、過ごしたことが、ないのよね。
●サングラスがなくちゃ、生きてゆけない。
●濡れ猫×2。
●濡れ鳥×2。
●手黒人。
●首かぶれ。
●エイリアンのかたち以外は、やっぱりむかつくエピソードIV。
●手が痛い。


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May 2, 2002
「何を着ようか/肉体労働の時代」


 八時起床。昨日、何を着ていくか考えていなかったので、貴重な朝のひとときがパニック状態に。服がキマらないと一日がキマらない。つまらないポリシー。
 午前中は外注スタッフに依頼した物件の進行確認や事務処理など。今日は比較的ゆるやかなスケジュールだが、連休中にチチェックしなければならない物件もあるので気は抜けない。書かなければいけない原稿もヤマほどある。いかにストレスをためずにこれらを消化するかが、連休を快適に過ごすための鍵だ。
 午後より備品等の買い出しのため有楽町・銀座へ。暦の上では今日は平日だというのに、銀座は休日並の人出だ。この谷間の三日間も休めるなんて、うらやましい。
 「重力の虹」。主人公の分散化。というより分裂化? これはパラノイア小説でもある。
 中上健次「岬」。中上氏のルーツとも言える熊野での肉体労働時代を材とした私小説だ。

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May 1, 2002
「愕然/血小説/圧倒」


 今日から五月。時がたつのが早すぎる。正月に「今年はこれをやろう」と思ったことのほとんどが、まだ手つかずの状態。自分のなまけっぷりに愕然とする。
 移動中、電車のなかで中上健次「浄徳寺ツアー」完読。血は生に通じる。右翼にも左翼にも白痴にも親不孝者にも体には血が流れている。生きている。続いて同じ短編集にある「岬」を読みはじめる。これまた私小説。「浄徳寺」よりも設定が本人に近いようだ。
 夜、NHKの「わたしはあきらめない」を見る。美輪明宏が登場。激動の半生、「紫の履歴書」のトーク版。その存在感と人生の重さに圧倒されてしまった。
 「重力の虹」は、今日はお休み。高橋源一郎「ゴヂラ」。影の総統と森鴎外・夏目漱石。…失笑。

 



 

 



《Profile》
五十畑 裕詞 Yushi Isohata
コピーライター。有限会社スタジオ・キャットキック代表取締役社長。妻は本サイトでおなじみのイラストレーター・梶原美穂。モー娘。ネタが日記でチラホラしているが、実はひいきにしているわけではない。本人いわく「モー娘。ネタのほうが勝手にオレに寄ってくるのだ」…自意識過剰。

励ましや非難のメールはisohata@catkick.comまで