「蹴猫的日常」編
文・五十畑 裕詞

Feb.28, 2002「和らぐ首根っこ/読ませてやりたいわ/動物とクルマ、クルマと猫とウンコ」

 就寝前に貼った温湿布が功を奏したのか、首の痛みはかなり和らいできた。が、まだ痛い。
 月末はなにかと忙しい。銀行で入金の確認やら外注費の振り込みやらをしているうちにお昼になってしまった。ありゃりゃ。プリンタの修理に来ていたE社の担当者の煮えない態度に腹が立つ。
 午後よりI社へ。N社の新サービス用パンフレットの打ち合わせ。電車で「週刊モーニング」。「大使閣下の料理人」フィナーレに向けて着実にストーリーが進んでいる。プロの料理人とはどんなものか、大使館お抱え料理人との決定的な差は何か--興味深い。おもしろい。ああ、「XXしんぼ」の原作者に読ませてやりたいわ、ホント。「取締役 島耕作」。このマンガ、島が誰もを唸らせる企画を実行に移すまでのプロセス、ようするにアイデアが生まれる瞬間がまったく描かれていない。なぜだろう。「不思議な少年」。作者の想像力と構成力がうらやましくなった。
 日経新聞の夕刊。福岡では犬猫同伴可能なタクシーが人気、という記事を見つける。ペットが急病となったときなどに活躍しているらしい。動物を飼うからには、その生命には責任をもたなければいけない。その使命をまっとうするための手段、ということかな。ちなみに、うちの猫はクルマに乗るのが大嫌いだ。一度、車内でウンコされたことがある。意図的な嫌がらせだ。絶対に。
 ピンチョン「重力の虹」。黒の軍団、黒の装置、そして<ロケットマン>。うーむ、わからん。


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Feb.27, 2002「首根っこ/美女に赤面/堂々エロ/ウンコとナチス」

 花粉症の症状は和らいでいるが、今度は首が痛む。寝違えとはまったく違うようだ。動かすと、根っこのところが痛むのだ。なんでだろう〜なんでだろ。パソコンに向かったり、文字を書くのが苦痛だ。仕事にならん。困った。
 午後より築地のN社にてMの打ち合わせ。帰り道に、珍しく道を訪ねられた。人相悪いから、めったに声なんてかけられないのに。好みのタイプのかわいい女性だったのでどぎまぎしてしまった。いい歳して、情けない。
 中央線で隣に座っていた男性、車中で堂々とエロ週刊誌を見ている。ただのヌードグラビアだったらどうってことないのだが、このオッサンが見ていたのはその一線を越えていた。こういうのは自宅でこそこそと見てほしいものだ。……そういうぼくは、オッサンの隣で性的描写がかなり多い中上健次の「日輪の翼」を読んでいたのだが。ははは。
 ピンチョン「重力の虹」。第二次大戦中のドイツの<トイレ船>のエピソード。トイレネタ/ウンコネタと第二次大戦--というのは、ちょっと大げさすぎかな。


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Feb.26, 2002「粘膜防衛戦/穴の貢献/納豆遺伝」


 目がかゆくて目が覚める。鼻も出る。杉の花粉は少しずつだが確実に目鼻の粘膜を侵略し続けているようだ。このままでは仕事に差し支えてしまう。まずい。さてどうしようか、と思っていたら今日は以外にもスケジュールが緩やかだったので、病院に行くことができた。飲み薬、点鼻薬、目薬を処方してもらう。これで明日から快適になるはずだ。
 「重力と虹」。またまたテキストが迷走。今読んでいるパラグラフが何のために挿入されているのかが理解できない…。
 大田垣晴子「オトコとオンナの深い穴」を少し。うーん、赤面。これを読んで、風俗店で行われることを正確に理解できた女性が増えたらしい。女性の大半はキャバクラとピンサロの区別が付かないそうだ。ヘルスとソープの区別もしかり。大和撫子に風俗の正しい知識を与えた、社会的貢献度の高い本…ということになるのかな。
 夕食のときに、焼き魚を欲しがる花子に納豆をあげてみたら、なんとまあおいしそうに平らげてしまうではないか。そういえば、里子に出した花子の息子・隣のぐーちゃんも納豆が大好き。遺伝なのだろうか。


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Feb.25, 2002「フォッフォッフォッ」

 なんだか慌ただしい一日。F、Mの企画等。
 「週刊ビッグコミックスピリッツ」。「美味しんぼ」またまたワンパターンストーリーだ。雁屋氏はやる気があるのだろうか。
 中上健次「日輪の翼」。老婆の信仰心と若者の色欲の対比。
 ピンチョン「重力の虹」。第二次大戦がある女に与えた、ちょっと変わった傷跡。
 新宿駅で「さんまのからくりテレビ」に出ている加藤淳氏を見かける。半笑いしていた--さすがに「フォッフォッフォ」とは言っていなかったが。なぜ笑っていたのだろう。あれが素なのかな」。


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Feb.24, 2002「金沢/金沢よりも」

 八時起床。ホテルで朝食を済ませてから、まず兼六園へ。雪の兼六園、というベタな情緒を期待していたのだが、すでにほとんどが溶けてしまい雪つりの松をみることはできなかった。残念。大河ドラマのせいなのだろうか、とにかく団体客が多い。五十代から六十代のおばちゃんばかりだ。調子に乗って大騒ぎしているオッサンもちらほら。やかましくて辟易してしまう。
 考えるに、日本庭園とは一種のインスタレーションである。そこに自分の身を置き、自分を含めた環境として芸術を鑑賞する、というスタイルがよく似合うと思う。静寂は必須だ。
 続いて兼六園内にある伝統産業工芸館へ。輪島塗や九谷焼といった金沢〜能登エリアの伝統工芸を集めた美術館であるが、どうやら最近は現代のライフスタイルと伝統工芸の調和を模索しているようで、輪島塗+九谷焼+加賀友禅のランチョンマット+ロイヤルコペンハーゲンのワイングラスによるモダン和風のディナースタイルなどを提案していた。
 次は金沢地区の文豪を扱う近代文学館。室生犀星、樋口一葉、尾崎紅葉、泉鏡花…。文豪ゆかりの品やら原稿やら初版本やらが並ぶ。古本屋と同じにおいがした。
 ラスト、金沢県立美術館。特筆すべきもの、なし。
 九谷焼の招き猫をおみやげに購入し、十七時五十分の飛行機で東京へ。
 金沢の街より、空き時間に読んでいた中上健次「日輪の翼」の方が印象に残っていたという、何してたんだかようわからん一日でした。ちゃんちゃん。


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Feb.23, 2002「金沢へ」

 十時半起床。テレビをつけると、テレビ朝日で風水の科学的根拠を説明する番組をやっていたので、顔も洗わず見入ってしまう。科学と超科学の狭間、というような内容。
 十五時、出発。東京〜浜松町〜羽田空港へ。十七時発の飛行機で、いざ金沢へ。
 十八時、小松空港着。高速バスで金沢へ。十九時、ホテルにチェックイン。近所のホテルにあった郷土料理のお店で御膳を食べる。せっかくの金沢、会席を食べたかったのだが予算が合わない。で、御膳となったわけだが…うーむ、御膳というより定食。がっかり。初めて食べた「治部煮」は美味だった。とろみのある鶏とタケノコの煮物、という感じかな。「菊姫」とよく合う。
 中上健次「日輪の翼」読み始める。うちには中上作品が山ほどあるのだが、半分くらいしか読んでいないのだ。買っただけで満足、と言うわけではないのだが、つん読状態が続いていた。以前NHKでモックン主演でドラマ化されたことがある。Every Colour You Areの掲示板でも話題になったな。「周縁」=自分の生まれ育った地域の伝承をテーマにする傾向は大江健三郎と似ているが、アプローチや手法が全然違う。
 明日は兼六園と郷土工芸館の取材だ。「ナースマン」のなっちの演技をチェックしたら、早めに寝ようかな。


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Feb.22, 2002「猫の日/花粉の日/椅子と間違えられた」

 ニャンニャンニャンの日。
 午前中は事務処理等。午後より打ち合わせのためN社へ。コートを着ていったが、暖かいので脱いでしまった。見回すと、ぼくと同じようにコートを手にもって歩く人があちこちに。春は着実に近づいている。いや、もう春がやってきたのかな。花粉とともに。コートを持つ人と同じくらいの数の人がマスクをし、目をこすり、くしゃみをしている。
 東京駅から中央線に乗り込み席に座って手帖に打ち合わせの内容やらTO DOやらを書き込んでいると、二十歳くらいだろうか、見知らぬ(あたりまえか)男性が僕の膝の上に座ろうとしてきた。びっくりして立ち上がり、男の顔をのぞき込む。男もぼくの顔をのぞき込む。隣に座っていたおばさんは、ぼくの顔と男の顔を交互にのぞき込む。二秒後、男は首を傾げながら隣の車両へと去っていった。……なんだったんだろう。
 大江健三郎「私という小説家の作り方」完読。作家のインスピレーション、枯れた作家の憂国論に対する批判、「最後の小説」への想い、そして今は亡き武満徹氏へのオマージュ。
 夜、日本テレビの金曜ロードショー「ルパン三世」を見る。映画第一作。二十四年前のルパンだ。アニメの技法と社会背景が当時の時代をよく表していた。
 テレビ朝日「トリック2」。ギャグが多すぎると思った。続いて「タモリ倶楽部」。「フードバトル グラム」駄洒落が発端の企画なのだろうか。安西肇氏、また遅刻している。
 

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Feb.21, 2002「谷間の一日/舞踏の世代交代/アクティブシニアと人妻エロスの共通点」

 ほとんどの仕事が一時的に手を離れたり、予定していた打ち合わせがキャンセルになったり…と、めずらしく予定がほとんどない一日に。谷間、だな。買い出しやトイレ掃除に精を出す。
 吉祥寺駅で舞踏家の伊藤キム氏を見かける。第一回朝日舞台芸術賞で寺山修司賞を受賞した人だ。贈呈式のパーティで、伊藤氏はあの大野一雄氏といっしょに踊ったという。舞踏の世代交代を象徴するようなできごとに衝撃を受けたのを思い出した。
 事務所に「第12回シルバーサービス展」の招待状が届く。イメージビジュアルの写真、アラーキーの作品だったのでびっくり。なんということはない、ガーデニングを楽しむ五十代、いわゆるアクティブシニア夫婦のスナップだが、そんなシチュエーションはさておき、屈託のない笑顔が印象的で「人妻エロス」をライフワークにしている写真家の作品だとはちょっと思えなかった。これを見て、アラーキーが「日本人の顔」プロジェクトを進めていることを思い出す。還暦を過ぎたアラーキーが、二十世紀を生きた日本人の「顔」を写真として残すために四十七都道府県を撮影しながら行脚する、という企画だ。「ハダカを撮っててもね、最後はなぜか顔を狙ってるんだ」という氏の言葉を思い出した。
 「ダカーポ」購入。油つぼリンカーン氏のエッセイの「超能力商法」と、花くまゆうさくの「メカ・アフロ」の「トゥナイト2が終わっちゃう」、笑ってしまう。
 「井上ひさしと141人の仲間たちの作文講座」を少し。
 ピンチョン「重力の虹」。ロケット設計技師ペクラーの章のラストに漂う虚無と絶望。その描写の巧みさ、迷走するテキストの絶妙なまとめ方に舌を巻いてしまう。
 今日からEvery Colour You Are掲示板を再開することにした。デヴィッド・シルヴィアンの誕生日を無粋な状態で迎えたくないからだ。


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Feb.20, 2002「筆記具難民/コートの中の春」

 仕事が一時的だが収束しつつある。気持ちに余裕が出てきた。
 手帳への記入はロットリングのボールペンを使っている。書き味はいいのだが、どうもインクの乗りが悪い。紙との相性の問題だと思うのだが、文字が掠れてしまうのだ。万年筆はどうかな、と思いラフを起こすときに愛用している「ふでDEまんねん」を使ってみる。うーむ、これもいまいち。インクの乾きが悪いので、手帳をすぐに閉じると文字が対面のページに写ってしまうのだ。続いて、JRの駅構内で買ったバッタモンの万年筆。これはいい感じ。かと思ったら、太すぎて手帳のペン差しに入らない。ありゃりゃ。うまくいかないもんだ。
 夕方、Zで打ち合わせ。道すがらすれ違う女の子たち、コートは着ているが中は薄着、というのが多かった。暖冬なのか、春が訪れているのか。女性のファッションは季節を感じるひとつの手がかりだ。
 「私という小説家の作り方」。詩人にとって想像力とは何か、という問題。


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Feb.19, 2002「改装中でありゃま/マン/これだけで書けそう」

 今日も慌ただしい一日。鼻水の具合も慌ただしい。Fのパンフレット原稿等。夕方、Z社にて打ち合わせ。終了後、本を買おうと思いルミネの青山ブックセンターに行くが、改装中のため閉店していた。ありゃま。
 「私という小説家の作り方」。トーマス・マンの日記と私小説について。恥ずかしながら、マンは読んだことがない。不勉強だなあ。
 「重力の虹」。軟禁されロケット開発を強いられる男のもとに、娘を名乗る別人が毎年必ず訪れるというエピソード。アイデアとしての素晴らしさに脱帽してしまう。これだけでおもしろい小説が一本書ける。 ----------
Feb.18, 2002「足裏花粉説/フリーターカルチャー?/マンガ、テクニック、リアリズム/迷走と二律背反」
 七時五十分起床。夕べ寝る前に貼った樹液シートをはがしたら真っ黒に汚れていた。この汚れが健康のバロメーターになるらしい。体調は思わしくない、ということか。確かに、鼻水はよく出るな。でもこれは花粉症に違いない。ひょっとして、足の裏に花粉がたまっているのか!?
 朝一番で代官山にて打ち合わせ。東横線の同じ車両にいる女の子たちを見て、「フリーターカルチャー」のようなものが形成されつつあるのでは、という考えが浮かぶ。時間があれば、つっこんで考えてみたいテーマだ。「Quick Japan」なんか、サブカルチャー誌と言われているけれど中身は「夢を追うフリーター」が好きそうなものばかりだもんなあ。ぼくが高校生の頃は、この役割を「宝島」が果たしていたのだが、当時とは社会状況も経済事情も流行も風潮もすべて異なる。ぼくは「宝島」で育ったが、サブカルチャーと遊んだとか、あるカテゴライズされた何かのなかに身を置いたと、いう実感はまるでなかった(今思うと、自分もカテゴリーのなかにいたのだなと思えるのだが)。何かが変化しているようだ。
 午後はA社のK氏と打ち合わせ。鞄、筆箱、ノートと、持ち物のほとんどがどうやら無印良品。これも一種の「フォーム」だな、と思う。
 夕方、肩こりと腰の治療のために鍼灸治療院へ。治療のため、というより鍼が気持ちいいから通っているのでは、と思うことがある。鍼を刺されて快感、なんて書くと変態さんと思われそうだな。
 「あいのり」をチラリ。純情パン馬鹿野郎の恋、玉砕。
 「週刊ビッグコミックスピリッツ」。「20世紀少年」、カジノでのオリジナル博打の設定のうまさに感心する。最近の浦沢直樹はとてもディテールにこだわっている。それが彼独特のリアリズムを助長しているのだと思う。「マスターキートン」でもその傾向は顕著だったが。「御三名様」、めずらしくテクニカルな展開だと思った。セピアからフルカラーへ。着色を利用した、世にも間抜けなストーリー構成。内容よりもテクニックに笑った。
 大江健三郎「私という小説家の作り方」。バフチンのいう「祝祭的な、また全民衆的な気分」というのは、ニーチェの「ディオニソス的なるもの」と本質的に一緒なのかな? ようわからん。
 ピンチョン「重力の虹」。ロケット開発者ペプラーのエピソード。ペプラーの人生を追っているだけなのに、テキストが迷走している。でも本質ははずしていないんだろうな。妻への愛と娘への愛。子を思う親の気持ちと、子を疑う親の気持ち。この作品には、二律背反が至るところに現れる。その意図まで読みとろうとすると疲れちゃうな。

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Feb.17, 2002「今日は脳みそがオフモードです」

 疲れたので完全休日にする。十時に起床。なんだかどろどろした感じ。残り物のカレーと自家製パンでブランチを済ませてからフィットネスクラブへ。疲れているのか、妙にしんどく感じる。
 帰宅後、シャツにアイロンをあてながら「料理バンザイ」。雪印食品の事件発生後はじめて見たのだが、CMはすべてACのものに差し替えられていた。提供の表示もない。滝田栄と鈴木杏樹はまったくいつもと変わらない。当たり前だが。ちなみに鈴木杏樹はぼくの最近のお気に入りだ。とテレビに気を取られていたらシャツを少し焦がしてしまう。
 「サイボーグ009」。原作でも「少年サンデー」時代には、ほとんど「ホテル」状態の人間模様ネタが続く時期があったが、今回はその流れをくむエピソードだ。これもまた009のミリョク。いや、石ノ森のミリョク。来週の元ネタはどうやら「ディノニクス編」らしい。楽しみだ。個人的には「ギリシア編」「地下帝国ヨミ編」のアニメ化が見たい。
 新しいアルファ147のコマーシャルを見る。カミサン「蝉みたい」だって。まったくその通りだと思う。
 お風呂のなかで「サイゾー」を読む。「建てもの探訪」の渡辺篤史が「隣の晩ごはん」のヨネスケと対決させられていた。「どっちがわが家に来てほしいでショー」対決。結果は渡辺の勝ち。理由は「ヨネスケには、そこらへんで会えそうな気がするから」だって。そんなことはないと思う。

 
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Feb.16, 2002「珍妙な家/届かぬ電波/伊丹とナラティブ」

 九時起床。休日出勤だ。毎週楽しみにしているテレビ朝日の「建てもの探訪」を見てから事務所へ行く。ちなみに、この番組をわが家では「珍妙な家」と呼んでいる。
 十二時、スピードネットの技術担当者が来る。無線アクセスの電波が届くかどうかの検査。残念ながらまったく届かず、計測器はウンともスンともいわなかったそうだ。がっかり。今は東京めたりっくのSDSL(距離による干渉が少ない!)を利用しているのだが、なんせ接続料が高くつく。なんとかコストダウンしたいのだが。先日申し込んだBフレッツはビルの設備が未対応だったためにNG。無線アクセスは最後の手段だったのだが…。局からの距離があるのでADSLは駄目だとわかっていながらも、イーアクセスに申し込んでみた。どうなることやら。
 午後よりM社の構成など。仕事に没頭していたら、Oさんからデヴィッドの秘蔵CDが届く。ありがとうございます。お礼しなくちゃね。
 夕方、吉祥寺へ。猫のごはん等。
 夜、伊丹十三監督の「マルサの女」見る。この作品、なぜかまだ見ていなかったんだな。伊丹監督といえば、大江氏が書いた「取り替え子」。大江氏と伊丹監督の、死と時間を超えたコミュニケーションが描かれた小説だ。これまでの大江小説とはちょっと違った感じだったが、「私という小説の作り方」を読んで、その理由がナラティブによるところが大きいことに気づいた。
 猫のクローン成功のニュース。思ったことはいろいろあるのだが、かなり重いコラムになりそうなので、次の機会にゆっくりと書きたいと思う。ごめん、滋賀県のHさん。


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Feb.15, 2002「根性なし/集中力なし」

 忙しいので早めに起きて事務所に行こうと思ったが、眠気に負けてしまう。根性のない自分に呆れる。
 アポイントはひとつもなしという珍しい一日。午前中は黙々とパソコンに向かい、原稿を書き続ける。
「野菜倶楽部」のお弁当で昼食。モロヘイヤジュースなど。
 午後はM社の仕事を進めるために英語の資料をただひたすらに読み込む読み込む読み込む読み込む。A4のコピー用紙に40枚ほどもある英語の連なりに、量だけで圧倒されてしまった。情けない。とめげていても仕方ないので、研究者の英和中辞典を片手に英文読解に取り組むことに。大学ではドイツ語専攻、第二外国語の英語も経済学部や法学部の学生よりは多く勉強していたので、読むことだけならなんとかなる(英語なんてそうそう使わないので聞いたり話したりはほとんどできなくなっている。なんせ大学の授業だけの付け焼き刃だったから)。問題は、知らない単語が出てきたときだ。そこで思考が途切れる。辞書を引く。ここが集中力の途切れ目にもなってしまうのだ。はかどらない。そんな状態を繰り返すうちに夜が来てしまった。溜息。
 西荻食堂Yanagiにて夕食。エビスビールと和風ロールキャベツ定食。まあ、おでんだな。


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Feb.14, 2002「感動させる菓子/鳥の話をみっつばかり/元気ならよしとしよう」

 バレンタインデー。だが妻帯者でフリーランス(一応法人にはしているが)のぼくには関係ない。本命チョコはもとより、職場義理チョコというものもないわけだ。…と思ったら、ありがたいことに、カミサンのお母様から高級そうな生チョコをいただいた。それから、カミサンからも。貴腐ワインにつけたレーズンが入っているチョコ。香りがとてもフルーティ。レーズンというよりも、フレッシュなブドウという感じなのだ。久々に菓子で感動した。
 鳥の話、その一。今日は生ゴミ収集の日。朝からカラスが大騒ぎだ。ゴミを出しにいったら、スタンバイしていたカラス二羽にガンとばされた。鳥好きのぼくであるが、これにはさすがにちょっとビビった。
 鳥の話、その二。Z社より依頼のDM、突然路線変更となったため打ち合わせのため新宿へ。南口の(アニエス・bがある方の)ルミネの前を通りかかったとき、以前ここの入り口の上につけられた大きな看板の裏側に、セキレイが数十羽の群で留まっていたのを思い出した。まだいるかな、と思い立ち止まって看板の方を見てみたが、一羽もいない…。きっと、もっと住みやすいところへ移ったのだと思い込むことにした。
 鳥の話、その三。「週刊モーニング」購入。「部長 島耕作」最終回。予想どおりの結末と、予想どおりの次回タイトル。「取締役 島耕作」だってさ。……で、これがなぜ鳥の話なのか。それは、以前ある雑誌に「ダチョウ 鳥耕作」というパロディが掲載されていたのを思い出したからだ。どんな話だったかは忘れた。
 カミサンと外で食事を済ませてから帰宅すると、古巣のD社で動機だったKちゃんから引っ越しはがきが届いていた。と思ったら、引っ越しはがきではなくて「離婚はがき」だった。文面は「引っ越ししました」だったが、その理由が離婚にあることをちゃんと書いていたので、やっぱりこれは「離婚はがき」だ。何と申し上げてよいやら。でも「元気だよ」と書いてあったから深く考えないことにする。
 日記を書いていたら花子に噛まれた。



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Feb.12, 2002「一時閉鎖/祝・会社設立/荒れるウェブサイトと平和なわが家」

 朝一番でウェブサイトをチェックすると、わが「Every Colour You Are」の掲示板が昨日よりも荒れている。モラルのなさと一部の書き込みに対する不快感ゆえに一時閉鎖を決意。ちょっと時間を置いてから、今後どうするかを考えようと思う。
 以前ウチの会社にいたKくんが株式会社を設立。新しい名刺をもってウチに挨拶に来た。ご立派。ビジネスモデルについてのアドバイスを少々。
 夕方はZ社へ。デザインカンプを提出。
 「私という小説の作り方」。大江健三郎的引用論。「小説即ち是引用」といったところか。個人的には最高傑作だと思っている「懐かしい年への手紙」における引用とその考え方、テクニック。そして祖シュールのラングとパロール、そして引用の関係。というよりも引用という手法を使ってラングとパロールを説明した、といったほうが適切かな。
 夕食後、麦次郎にいたずら。尻尾の付け根をぐりぐりしてみたら、激しく怒った。花子はこの日記を書いているぼくの横でグースカと寝息をたてている。ウェブサイトは荒れたが、わが家は平和だ。
 この日記、今後は「Every Colour You Are」ではなく「なまけ猫王国」で公開しようかな、と思う。


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Feb.11, 2002「奇行の季節/護摩の季節/春物の季節/でもまだ鍋の季節」
 
 朝八時頃より、花子に一時間近くペロペロされたりかまれたりモミモミされ続ける。天気が良かったからだろうか、起こしにきたのだ。……九時に根をあげて起床。
 ようやく休み。十四日ぶり、よく働いたもんだと思う。
 高幡不動へお参りに行く。毎年二月の恒例行事だ。吉祥寺から井の頭線で明大前へ。京王線に乗り換えて府中方面の電車に乗ったのだが、そこで妙な人を見かけた。車内でハーモニカを吹いているのだ。
 女性。いまどき珍しくカラーリングのされていない、パサツキ気味のボブヘアー。ツイードのコートにドピンクのマフラーと豹柄のタイトなパンツという出で立ち。ちょっとまとまっていないファッションだが、まあどこにでもいるふつうの女の人、という感じだったのだが、実はタダモノではなかった。しばらく車内をうろついた後、車両の先頭部分を陣取り、進行方向を見つめながらしばらく放心しているかと思うとおもむろに紫色の合皮のショルダーバッグからハーモニカを取り出し、「エーデルワイス」などを演奏しはじめたのだ。少々遠慮しているのか、音は小さめだが音色はバッチリ車内に響きわたっている。彼女はほとんどの乗客に背を向けていたので、みんなエーデルワイスがどこから聞こえてくるのかわからない。車内はざわめいたが、すぐに平静な状態に戻ってしまった。ほとんどの人たちがさほど不快だと思っていなかったからだと思う。
 奇行が珍しかったから、というよりは、なぜ彼女は放心し、ハーモニカを吹いたのか、その理由が知りたかったからここに書いてみた。何らかの体験と思索ゆえの衝動、そして奇行だったのだと思うのだが…その経緯が知りたい。よけいなことだとは思うのだが。
 高幡不動でご祈祷を終えてから新宿へ。久々のお買い物だ。狙いは春物のお洋服。まずはカミサンのボトムを買うために伊勢丹本館へ。Y's。プリントもののスカートがちょっと新鮮だが、さほどもの珍しくもなく、興味も持てなかった。続いてYohji Yamamoto + noir。エレガントの極み。Y's bis LIMI。去年の春夏は正直言って期待はずれ、これならWXYZを残しておいた方がよかったという感じだったのだが、今年は冴えている。基本的にはY'sの王道路線なのだが、そのなかにチラリと見えるオリジナリティ。カミサン、ここで超ワイドパンツを購入した。続いて僕の服を見に、伊勢丹新館へ。Yohji Yamamoto Pour Homme。イラストレーターとのコラボレーションによるシャツは、正直言ってよくない。Yohjiテイストはあるのだが、主張がよくわからん。まあ、戦争の翌年は得てして派手なデザインが増えるものなのだが。レトロな女性のイラストをあしらったラインはなかなか。山本耀司流の「粋」が感じられた。ISSEY MIYAKE MEN。皺加工やプリーツのラインが少なくなり(というか、見あたらなかった)、派手なプリントものが目に付いた。Comme des Garcons Homme。花柄刺繍のシャツが印象的。ロゴプリントのシャツが復活。どちらも懐かしい感じ。丸井へ。Y's for Men。こちらも花柄刺繍のラインがメインとなっていたが、どちらかというとかわいい印象のあるギャルソンの花柄とは違い、耽美的、退廃的、かつストイック--という不思議なテイスト。赤タグのラインでシンプルな黒のレーヨンシャツを購入した。
 夕食はキムチ鍋。春物を物色した後に冬の風物詩である鍋を食する…変な感じだ。
 大江健三郎「私という小説家の作り方」、ピンチョン「重力の虹」、大田垣晴子「小さなモンダイ」それぞれ少しずつ読む。
 夜、スポーツニュースで石井一久の入団会見。素人お笑いの極み。吉本がマネージメントというのもうなずけるな。


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Feb.10, 2002「フィットネスクラブの欠点」

 今日も休日出勤。M社の企画、なんとか終わらせることができた。
 夕方、ちょっとだけ事務所を抜け出してフィットネスクラブへ。久々に体を動かす。健康にはよいのだろうが、今一つ達成感が感じられないのがフィットネスクラブの欠点だと思う。
 「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」。山崎邦正は正真正銘のヘタレだと思う。


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Feb.9, 2002「ワーキング・スタイル/架空に潜む現実」

 やってもやっても仕事が終わらない。したがって今日も休日出勤、朝から労働だ。M社のサイトリニューアル提案の企画作りを中心に。ほとんどプランナー状態なのだが、ぼくの名刺にはどこにも「プランナー」と書かれていない。複雑な心境。
 マンダラートを利用して企画を進める。紙のマンダラで断片的に生まれるアイデアと考えを膨らませ、Macにインストールしたデジタル・マンダラでそれを編集し収束させる。それをリニアな流れにまとめ直せば、企画のストーリーは完成。あとはPowerPointでレイアウトしながら清書するだけだ。単純な企画ならいきなりPowerPointで仕上げてしまうのだが(ほんとうはQuark XpressとIllustrator、Photoshopで作るのが一番美しくかつ速いのだが、受け取り側が対応できないことが多いため最近はパワポを利用することが増えた)、今回は複雑かつ難物であったので、マンダラートという手順をふんだ。ぼくのワーキング・スタイルだ。
 マコリン。氏より例のブツが届く。丁寧な仕上がり。ありがとうございます。
 「週刊ビッグコミックスピリッツ」購入。うーん、全体的に今一つ、という感じ。盛り上がっているストーリーが少ないせいだろうか。伊東美咲ちゃんのグラビアは美しかったな。ポスト井川遙だなあと思う。
 夕方、行きつけのマッサージ店へ。至高の六十分。あやうくよだれを垂らしそうになる。
 夜、夕食を食べながらテレビ東京「美の巨人たち」を見る。ギュスターブ・クールベ「画家のアトリエ」にまつわるストーリー。善の象徴としての人物群と悪の象徴としての人物群、その中間に位置するのは、故郷の風景画を描く写実主義の画家・クールベの自画像。架空のシチュエーションだが、彼は現実の世界を描こうとした。ということらしい。表現方法こそ違うが、ちょっとだけ岡本太郎に通じるところがあると思った。


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Feb.8, 2002「アタッシュ僧侶/ロシア・フォルマリズム」

 今日も多忙な一日。打ち合わせで代官山へ行ったら、ヒルサイドテラスで「木梨憲武展」が開かれていた。が、時間がないので見れず。午後もバッタバタの状態。ふう。イライラするので、お香とモーツァルトでごまかす。
 そうそう。新宿駅で、アタッシュケースを広げて書類やら資料やらをガサガサとやっている僧侶を見かける。
 大江健三郎「 私という小説家の作り方」を少しだけ。ロシア・フォルマリズムの影響。


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Feb.7, 2002「粋にメモを使う方法/猿と猿回しの関係」

 朝からバタバタな一日。一時間で企画を熟考、そのままN社へ。
 中央線で東芝のPocketPC「Genio e」にAir H"を装着して使っているオッサンを見かける。猫背になって小さな画面をのぞき込み、ちまちまとペンを操作する姿がどうもさまにならない。ぼくはいまだかつてカッコよくPDAを使いこなす人を見たことがない。丸の内線に乗り換えたら、今度は背広の内ポケットからおもむろに革装の手帳を取り出し、金色に輝くクロスのボールペンで粋にメモを取る老人を見かけた。スタイリッシュ、この一言に尽きる。
 帰り際、ニシギンザデパートの前で猿回しを見かける。猿回しとお揃いのハッピを着たお猿さん、出番前はおとなしく赤い椅子に座って待っている。その姿が妙にかわいらしかった。じっと出番を待つ姿は忠実そのもの。訓練のたまものなのだろうか。猿回しの口上を聞きながら、猿回しと猿の絆というか、精神的なつながりについてちょっと考える。がとりとめなくなってしまう。そりゃそうだ。ぼくは猿回しのことも猿のこともよく知らない。
 「週刊モーニング」購入。「部長 島耕作」次回最終回。次は「取締役 島耕作」なのだろうか。個人的には「辞職 島耕作」「脱サラ 島耕作」が読みたい。新連載の佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」医療を「金」の面から語ろうとしているのか。期待できる。高橋ツトム「鉄腕ガール」最終回。上手にまとまったもんだ。
 風呂にてピンチョン「重力の虹」。錯綜する登場人物、時間、ストーリー…疲れる。
 徹夜明けなの で、苺を食べて栄養補給してから寝ることにする。うまい。

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Feb.6, 2002「徹夜」
激務。仕事をこなしきれず、今日は徹夜。あーあ。
 「ダカーポ」。天皇家特集。買ったけどほとんど読めず…。


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Feb.5, 2002「見上げれば、巨乳/生き延びている、言葉を/ピンチョン再び」

 樹液シートのおかげか、心地よい寝覚め。なのだが、日中は妙に疲れた感じ。週末まったく休まなかったからだろうか。
 午後よりMの打ち合わせのためN社へ行く。四谷から丸ノ内線を利用。車両に乗り込むと、いきなりでかい音でヘッドホンステレオを鳴らしているヤツがいた。スネアとシンバルがシャカシャカと鳴り響く。誰だ迷惑だな、と思い見渡すと、なんと皮ジャンパーを着た(決して「皮ジャン」ではない!)四十代のオッサン。ビートの利いた激しい曲調とオッサンの風体とのギャップに唖然としてしまった。オッサン、国会議事堂で下車。うーむ。職業が知りたい。
 打ち合わせ終了後、伊東屋へ。筆記用具売場を見るために階段を上りつつ踊り場にあるディスプレイを見ていたら、上から足音が、というより人の気配がしたのでぶつかっちゃいかんと思い視線を頭上へ移すと、そこにはスッゴイ巨乳があった。女性の姿ではなく、まず巨乳が目に入ってしまったのだ。ちょうどそのように見えるアングルにお互いがいたからなのだが、それにしても不思議な驚きだった。変に思われるとイヤだからすぐに目をそらしたが…見上げれば、巨乳。ふふふ。アダルトビデオのタイトルにありそうだな。
 移動中「私という小説家の作り方」。大江氏が「燃えあがる緑の木」を上祥した直後に出会ったという、R.S.トーマスなる詩人の作品の引用に衝撃を受ける。

 六十歳になってもなお
 生き延びている、言葉を
 所有することの寓話は。

 帰宅後、しばらく読むのを止めていたトマス・ピンチョンの「重力の虹」再開を決意。二巻の四分の一くらいまで読んでいたのだが、二巻をはじめから読み直すことにした。覚えきれないくらい現れる登場人物と数奇なストーリー、めくるめく暗喩。たちまち作品世界に飲み込まれてしまう自分の卑小さに気づいた。

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Feb.4, 2002「不思議三連発」

 一昨日からずっと同じ仕事に取り組んでいる。暗中模索だったのだが、ここにきてようやく先が見えてきた。なんとかなりそうだ。
 「野菜倶楽部」のお弁当で昼食をとるが、なぜか今日は最悪の出来。全然おいしくないのだ。シシャモのフライが、ほかのすべての付け合わせと喧嘩している。セットでついてくるモロヘイヤジュースまでもが生臭くなるのだ。あーあ。
 午後よりZへ。構成案の赤字戻しなど。終了後、I社K氏と近くの喫茶店に入ろうとすると、道ばたでロン毛・髭のオッサンが謎の民族楽器を演奏していた。全長120センチはあるだろうか。巨大な尺八というか、アジアンなホルンというか、そんな形をしている。オッサンがそのアジアンホルンのてっぺんに唇をつけ、息をフォッと吹き込むと、ボォーっと低くてこもる音が新宿の街に鳴り響く。吹き方によっては口琴みたいなビョンビョンした音も出る。なんだ、これ。オッサン、これを使っておそらく即興であろう前衛的というか環境音楽的な曲を弾いている(のだと思う)。楽器に惹かれてしまい、もう少し鑑賞(観察?)したいと思いつつも、K氏が一緒なので断念。残念。
 本日の不思議、二発目。喫茶店に入りK氏と仕事の打ち合わせをしていると、今度はワハハ本舗の柴田理恵を見かける。スタッフらしい人間数名を引き連れて店のなかへと入ってきたが、空席がなかったためか、すぐに出ていってしまった。うーむ。テレビと同じ顔、同じ雰囲気だ。カメラを通さないときの顔というか、プライベートモードというか、そういういうものをもっていないのだろうか。気になるが、気にしても仕方のないことなのですぐに考えるのをやめた。不思議なのは、彼女の存在にほとんどの客が気づかなかったこと。まあ、大騒ぎする対象ではないけどな。
 三発目。打ち合わせ終了後、店を出たらもう民族楽器のオッサンはいなかったのだが、同じ場所には、その替わりにジャージを着た二人組の女の子が立っている。妙な雰囲気だな、と思ったら、二人はそこで漫才の練習をしていた。歩行者天国や公園でならわかるが、新宿の裏通りの歩道で稽古することはないだろうに。うーむ。不思議なことが続く。
 帰り際に、新宿のビックカメラ、さくらや等でデジタル製品のカタログを収集。これは今日の打ち合わせのための資料。
 十八時、A社のデザイナーKさんが来社。N社とK社のタイアップパンフレットの打ち合わせ。Kさんの会社、旅行パンフレットの仕事が多いのだが、例のテロの影響で十月、十一月は暇だったそうだ。ところが十二月からは旅行業界も奮起したのか、新規の物件ラッシュ。ほとんど家に帰らずにひたすら仕事をしていたそうだ。まさに波瀾万丈。
 「ビッグコミックスピリッツ」購入。「美味しんぼ」究極対至高の対決、雄山の登場で多少は美食提案があったのだが、やはり「食文化をどう捉えたか」が論点となってしまう。「奈緒子」、おもしろいんだかおもしろくないんだかわからない展開。駅伝からマラソンにテーマが移り、少しはマンネリ展開が打破されるんじゃないのかと思ったのだが。
 疲れたので、足の裏に「樹液シート」を張り付けて寝ることにする。

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Feb.3, 2002「猫と節分」

 雨のなか、昨日に引き続き今日もお仕事。やれやれ。
 BBSの常連、まこりん氏からメール。うれしい申し出に歓喜する。ありがとね、まこりんさん。楽しみにしています。
 今回のように、BBSを利用してくれる皆さんからメールをいただくことは少なくない。これがきっかけで仲良くなった人もいる。JIJI氏から暑中見舞いをいただいたときはうれしかった。dAnNa氏からもクリスマスにギフトをいただいたことがある。うれしい限りだ。管理人冥利に尽きる。
 「ひごもんず」でラーメンと半ライスを汁麺飯汁方式でほおばっていると(わからない人は「美味しんぼ」を読むべし)、美男美女のカップルが来店。ちょっと気になるのでこっそり観察していたら、かわいい顔をしたおとなしそうな女の子が「特製ラーメンと、餃子!」と元気よくオーダーしたので唖然としてしまう。彼氏はひとこと「まじ?」ぼく以上に唖然としていたようだ。
 帰宅後は、二月三日・節分ということで豆まきを行う。まず、ベランダから「鬼は外」と言いながら豆をポイっと投げる。ここまではいい。次は、家のなかに向かって「福は内」と言いながらポーンと投げる。すると、猫たちが慌てて豆を追いかける。これが我が家では毎年恒例の行事となっている。季節の移り変わりを感じる行事に同居する動物たちも参加する--これがいたく気に入っている。
 節分といえば……「天中殺」がようやく終わる。この手のものを何から何まで信じているわけではないのだが、それにしても去年と一昨年はロクなことがなかったのだ。ああ、長かった。うれしい。
 今日から日記執筆用のマシンをシグマリオンからモバイルギアIIに変えることにした。理由はひとつ、キーボードが打ちにくかったから。どちらも同じNEC製、キータッチそのものはすばらしいのだが、キーの大きさを考えたらやはりピッチが16mmもあるモバギに軍配があがる。ここのところ肩こりに激しく苦しめられていたのだが、どうやら理由はシグマリオンのキーピッチの狭さにあるらしいのだ。シグは携帯性に優れているし、ゼロハリバートンによるデザインも秀逸なのだが……ここはやはり「書きやすさ」=「入力しやすさ」をとろうと思う。
 「私という小説家の作り方」大江健三郎を少し。ブレイク〜ダンテ〜イェーツにいたる大江氏の詩人引用遍歴。


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Feb.2, 2002「カタログハウスで効率化」

 九時起床。今日もお仕事だ。しんどい。
 十時過ぎ、出社。Fの件など。だいぶイメージは固まった。あとはこれを絵にするだけだ。「それいゆ」で昼食を済ませてから、仕事から逃げるように新宿へ。電車の中で大江健三郎「私という小説家の作り方」を少し。大江さんがオーデンの詩から受けた感銘と影響について。カタログハウスで注文しておいたティファールのスチームアイロンを引き上げる。寄り道せずにすぐ帰社。引き続きFに取りかかる。何とか目途が立ったので十九時に帰宅。
 帰り際、スーパー「富士ガーデン」へ。食材等。このスーパー、最近店内に酒店をオープンしたのだが、これがなかなか侮れない。オープン当初は紹興酒の量り売りなどをやっていた。日本酒の品揃えがまあまあしっかりしていて、久保田の万寿だの紅寿だのが置いてある。ぼくの好きな天狗舞もある。ふふふ。それから、地ビール。「なまらにがいビール」なんていうのもあった。ネーミングがいい。ちなみに「なまら」とは北海道の方言で「すごく」という意味らしい。地ビールはこうあるべきだ。
 夕食は鶏肉を使った韓国風の鍋「タッカルビ」。最後に入れた餅が美味。ふつうに食べるよりも米の甘みを強く感じる。コチュジャンや韓国産唐辛子の効用か。
 福田和也「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」読み終わる。第五章のラストではスランプの克服法として「フォームの確立」について触れられていた。かの色川武大氏が、スランプの時に旦那(よく言えばパトロン、悪くいえばカモ)相手にばくちをうたなければいけないときのため、フォームを徹底化したという。自分の勝機を逃さず、大崩れを防ぐための一種の手続き、儀式のようなものだと思う。なるほど、ぼくも仕事やプライベートではフォームにはこだわっている。というよりも、最近ようやく自分のフォームができてきたような感じだ。
 落ち着いたところでティファールのアイロンを試す。今まではナショナル製の小さなコードレススチームアイロンを使っていたのだが、これが雲泥の差。熱の伝わり方、すべり具合、スチームの出方などの機能はもちろん、握り心地、重みもよくしっくりとくる。アイロンがけは苦手で今までは一着仕上げるのに二十分くらいかかってしまいそのたびにカミサンに馬鹿にされていたのだが、今度のアイロンなら十分くらいで終わらせることができる。こういうのを「効率化」と言うんだろうな。

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Feb.1, 2002「 岡本太郎と縄文土器、そして対極主義」

八時起床。夕べは十二時過ぎくらいに床についたので、昨日よりすっきりしている。いつも通りに出社。午前中はFの企画など。午後よりNTT来訪。Bフレッツ導入前の設備調査。やはり、ビル内には光ファイバに対応した配線はないようで、通気ダクトなどを使って直接室に引き込むしかないらしい。オーナーに相談しなければ。
 十六時半、代官山へ。この街は浜崎あゆみのなりそこないみたいな女の子が多い。流行が生み出すのは無個性なのだろうか。流行と画一性は紙一重だ。一歩間違えれば、流行のモードは制服になりかねない。R社にてKの打ち合わせ。新規物件だ。続いて新宿へ。Kのための資料収集。紀伊国屋で立川談志の本がフェアになっているのを見つける。うう、欲しい。が、まだ読みかけの本が多いのでやめておくことにした。
 二十二時、帰宅。テレビ東京で岡本太郎の特集をやっているののでチラリと見る。太郎をインスパイアしたのが縄文土器であったことを知る。岡本作品の根底には縄文土器を通じてのナショナリズムが流れていたということだな。そして「対極主義」。具象と抽象、現実と空想、意味と無意味の同居した作品世界。両者がかけ離れていればいるほど、強烈なエネルギーが発生する、ということか。太郎の作品が急に気になりだした。暇を見て、青山の岡本太郎美術館に行ってみたくなった。




《Profile》
五十畑 裕詞 Yushi Isohata
コピーライター。有限会社スタジオ・キャットキック代表取締役社長。妻は本サイトでおなじみのイラストレーター・梶原美穂。最近は観葉植物にはまっている。植物になら嫌われることがないからか!?

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