某ITベンダー 食品流通系展示会 ブース制作
少しだけ「早すぎる」展示内容を、どう伝えるか。
幕張メッセや東京ビッグサイトといった大型展示場で行われる展示会イベントのブース内に設置したパネルおよび配布用パンフレットの制作事例をご紹介します。なぜ今「展示会」なのか。その理由はこのページのラストでお伝えしたいと思います。
展示会ブースというと、BtoB系の企業が自社製品を展示し、スタッフが説明を行い、場合によってはブース内でミニセミナーを開催したりノベルティを配ったりして見込客の来訪を促し、そこで名刺やアンケート回答をゲットして(「リード獲得」などと言われますね)、早ければその場で商談したり、後日セールス担当者が改めて連絡を取ったり…といったアプローチが行われますが、本件もまったく同様。少々難しかったのが、出展目的が「流通・小売事業者に向けて、IoTを売る」だったということでした。この事例を手掛けたのは3年前。「DX(Digital Transformation)」という言葉はまだ定着しておらず、ICT/IoTの小売店への導入がしきりに提案されてはいたものの、まだまだ納得できる成功事例が生まれていない状況でした。ここで展示されたソリューションは、企業や自治体のDX化が進み、一方で新型コロナウイルスが流行して人々のライフスタイルが大きく変わろうとしている今になって振り返ってみると、いずれも時代を先取りしているように思えます。…つまり、当時としてはそれくらいピンと来にくい内容だったということ。これをうまくブース来訪者に理解していただくために当社を含む制作チームが採用した手法が、「カスタマージャーニーをそのまま見せる」というものでした。
【与件】IT系企業3社が合同で一つのブースを展開
この案件の内容を難しくしている理由の一つが「合同ブース」あるいは「コンセプトブース」だったということ。3社が合同で、流通・小売業界に「今ある技術で、近い将来実現可能な、新しい小売スタイル・消費スタイルの提案」を行うことを目的に出店しました。参加企業はこんな感じです。
- A社…高機能なデジタルサイネージや画像解析を得意とする企業
- B社…オンライン決済システムの開発・提供を手掛ける企業
- C社…POSレジを中心に、小売店向けにさまざまなICTソリューションを提供している企業
この3社が、6点のソリューションを展示します。
- スマホ連動型タッチパネル式大型デジタルサイネージ(メイン展示)
- 電子マネーやデビットカードなどにも対応したマルチ決済端末
- スマホ連動型宅配BOX
- 混雑回避のためのスマホ連動型小売店向け駐車場予約・運用ソリューション
- 従業員の負荷軽減のための、スマホと二次元コードを利用した在庫管理システム
- 画像収集・解析技術を応用した消費動向のマーケティングサービス
当社を含むグラフィック制作チームは、ブース内の展示パネルおよび配布用パンフレットをつくることに。ブースデザインを担当するチームと連携しながらプロジェクトを進めました。
【基本方針】3つの方針を設定
展示内容は、どれも既存の技術を応用しているだけで最新の画期的な技術を用いているわけではありません。全国展開をする大手スーパーなら関心を示すかもしれませんが、スーパーマーケットは地元に根づいた中小規模のローカル企業も多く、先進的な技術にはなかなか手を出してくれないという傾向があります。しかし、これらのソリューションが今後(いつ頃になるのかは当時は予測できていませんでしたが)普及するのは確実。決して絵空事ではないこと、そしてこれらへの投資が店舗の売上アップや業務効率化に確実に伝わることを、できるだけ具体的に伝える必要があります。そこで、以下の3点を基本方針にしました。
- 先進性と生活密着感を両立させた表現
- マーケティング視点からの説明の徹底
- ビフォーアフターの提示による導入・運用効果のより具体的な訴求
【制作内容】5種類のツールを制作
①コンセプトパネル(1枚)
メイン通路側の目立つ位置に掲出し、先進性や利便性をアピールするとともに、他社の展示との差別化を図りました。キャッチコピーは、「IoTで、お客さまに寄り添う店づくり」に。当時注目されており、かつ他のブースでは使われていないと思われる「IoT」という言葉を使用しました。展示内容のすべてがIoTというわけではありませんでしたが、メイン展示がIoTだったので採用されました。また、補足的に「店舗マネジメント」「ホスピタリティ」「マーケティング」というキーワードも掲載。ただし、掲載しただけでは意味不明なので、それぞれに短めの解説文を加えています。パネル構成はこんな感じです。(著作権などの関係で実物は掲載できません。ご了承ください。以下同様です)
②機能概要説明パネル(6枚)
ソリューションの機能・特徴・導入メリットを、シンプルに説明するためのパネルです。1ソリューションにつき1パネルで構成。パネルに実機を埋め込んだり、パネルの前にデモ用端末を設置することを想定したデザインにしました。コンセプトパネルとの連携や統一感を意識し、デザインやコピーに「つながり」を持たせています。
③演出用サブパネル(6枚)
②および次に説明する④の補助的なパネルです。当時SNSで定着しはじめていた「ハッシュタグ」を模して、特徴訴求のキーワードの前に「#」を付けて、トレンド感を演出しています。
④ベネフィット説明パネル(6枚)
各ソリューションのメインターゲットをペルソナ化し、そのターゲットの生活や消費行動が、紹介するソリューションによってどのように変化し便利になるのかを説明するためのパネルです。「購買行動全体がこう変わる!」といった、行動の流れ自体を伝えたかったので、ソリューションごとにカスタマージャーニーを作成し、それをデザイン化してパネルにする、という手法をとりました。ここに掲載するのは、そのカスタマージャーニーのパネルを制作する前段階に作成した原稿。すべて当社が作成し、ここから情報を間引き、アイコンやフローチャートなど視覚化ができる部分を視覚化して、カスタマージャーニーパネルとして仕上げました。
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⑤ブース内配布用パンフレット(A4/4P)
ブース来訪者に配布するパンフレットです。コンセプト、紹介したソリューション、出展した3社の会社概要、をシンプルにまとめました。
【最後に】展示会よ、コロナからの復活を!
今回は、あえて新型コロナウイルスの影響が大きく、業界市場最大のピンチを迎えていると言われている「展示会」の案件を取り上げました。
残念なことに、2020年上半期の展示会は大半が中止や延期。しかし、WEBでの開催という新しい方法が登場しました(実はかなり前からありましたが)。また、秋以降は少しずつ開催されるようですが、感染防止対策やクラスター発見対策も徹底するために、かなり準備が進んでいるようです。例えば、スマホの位置情報システムや小型ビーコンを利用して場内での三密を避けるために入場者数をリアルタイムで正確に把握できるシステムや、入場者の会場内での移動経路を正確に記録して、万が一来訪者から感染者が発生しても濃厚接触した可能性のある人を迅速に割り出せるシステムも確立されつつあります。イベント業者は、感染を避けるための新しい展示方法を模索しはじめているようです。
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